「Dr. HOUSE」シーズン2の第15話(emergencyほか)

「Dr. HOUSE」シーズン2の第15話の場面です。PotPlayerで日本語と英語の字幕を同時表示し、スクリーンショットをとりました。この翻訳は解釈の誤りや短縮・割愛部分が多く、気になったので検討してみます。

(以下字幕)
911, what is your emergency?
911です
Yes, we need an ambulance at 10600 Xavier, unit 4-B.
救急車をお願い ザビエル通り600よ
(字幕終わり)

911は北アメリカにおける緊急通報用電話番号で、ここに電話をかけると普通、「911, what is your emergency?」(あなたの緊急事態は何ですか?)という答えが返ってきます。10600は、ここではten six-hundredと発音されています。字幕では、600に省略されています。Xavierは、フランシス・ザビエル(Saint Francis Xavier、1506-52、1549年日本に初めてキリスト教を伝えたスペインの宣教師)のザビエルです。 

次です。

(以下字幕)
(ハウス)What’s his current condition?
  容体は? 
(キャメロン)Stable.
  安定
(ハウス)Well, then we can wait.
  待つか
(フォアマン)Wait for what?
  何を?
(ハウス)For whatever you can’t figure out to cause something else.
  もっと まともな意見を待ってるんだ
(字幕終わり)

「もっとまともな意見を待ってるんだ」はどこにもありません。ここは、you can’t figure outを挿入句と考えると意味がとりやすくなります。

つまり、whatever to cause something elseは「ほかの何か(症状)を生じさせるようなものすべて」で、whatever you can’t figure outは「(今のところ)特定できていないものすべて」ということになります。結局、「何を待つんですか?」、「今のところ特定できていないが、今後、現れそうなほかの症状だ」が正しい解釈です。For whateverのForは、前文のWait forを受けるforです。

次です。

(以下字幕)
It’s obviously not a reaction to medication.
薬の副作用ではないですね
We haven’t given him any yet.
(日本語字幕なし)
Right. But what besides what it’s obviously not, can cause both lung scarring and the splotches?
ありえないことを話してもしかたないだろう
(字幕終わり)

a reaction to medicationは「副作用」ではなく「薬の反応/効果」です。どうしてかというと、We haven’t given him any yet.(まだ薬は何も投与していない)からです。

「ありえないことを話してもしかたないだろう」はどこから来たのか不明です。

besides what it’s obviously notは挿入句です。意味は、「明らかでないことのほかに/以外に」。what can cause both lung scarring and the splotches? は、「肺の損傷(瘢痕化)と(胸の)発疹の両方を生じさせることができるもの(病気)は何か?」が直訳です。

結局、「まったく該当しない病気は別にして、肺の損傷と発疹の両方が起こるような病気は何だ?」と訳せます。

次です。

(以下字幕)
I thought you didn’t believe there was anything wrong with his throat.
のどに問題はないのでは?
I never said I didn’t believe it. I just said I had good reason to doubt it.
選択肢を広げただけで 断言はしていない
And now?
つまり?
I have good reason to doubt those doubts.
のどに異常があるかも
(字幕終わり)

字数制限があるにしても、短縮しすぎです。話の筋が通らなくなるし、脚本を書いた人に失礼です。ここは、ハウスらしい皮肉な言い回しです。以下、試訳です。

「前に、のどに問題はないと思うと言ったでしょう」
「ないと思うと言ったことはない。のどに問題があることを疑う理由があると言ったのだ」
「では、今の考えは?」
「のどに問題があることを疑う理由があることを疑う理由がある/前言を疑う理由がある」

次です。

(以下字幕)
The patient’s a little old to be chewing paint off the walls.
塗料を飲んだとか?
Nor does he drink well water, eat fish every day, or do anything else that could have exposed him to heavy metals.
彼が重金属に触れる機会はありません
(字幕終わり)

最初の文は、「患者は、それなりの年齢なので、(子供と違って)壁の塗料を剥がし、口に入れて噛むようなことはしません」。

Nor does he ~ は倒置文です。「それに、井戸の水を飲んだり、毎日、魚を食べたり、そのほか今まで重金属に触れたことはありません」が粗訳です。

次です。

(以下字幕)
So would lupus nephritis, and it also causes tissue swelling.
ループスでも浮腫が出ます
He’s choking on his tongue, not his feet.
手足だけだ
(字幕終わり)

最初の文は、「ループス腎炎でも嘔吐が起こるし、組織腫脹(浮腫)も出ます」。この文の前に、Heavy metal toxicity could cause vomiting. という英文があるので、「も嘔吐が起こる」となります。

He’s choking on his tongue, not his feet. の訳は「患者は舌が腫れている(窒息しそうだ)、足は腫れていない(だからループス腎炎ではない)」で、字幕の訳は意味が反対です。

次です。

(以下字幕)
– Go search her.
– What, you mean her medical records?
病歴を?
If I meant that, good chance I’d have said that.
それならそうと はっきり言う
(字幕終わり)

最後の文はいわゆる仮定法混合型です。主節が仮定法過去完了ですので、そのように訳さなければなりません。

「病歴を調べろと言っているのですか?」
「そうなら、とっくにそうしろと言っていた」

次です。

(以下字幕)
Oh, God!
Call a code.
緊急だ
(字幕終わり)

インターネットに、次のような説明がありました。

call a code: a call sent out to doctors, nurses, and other health care workers to rush to the patient to try to restore life(医師や看護師、その他、医療従事者に対し、患者の元に駆けつけ救命活動を行うように依頼・指示すること)       

次です。

(以下字幕)
He was without oxygen for less than a minute. It can’t be hypoxia.
低酸素症ではない 
Could be a stroke.
梗塞だな
(字幕終わり)

He was without oxygen for less than a minute. の訳、「酸素がなかった時間は1分弱だ」が抜けていています。

strokeの定義は次の通りです。

※以下、ジーニアス英和
8 (卒中・日射病などの)発作

※以下、英辞郎
【1-名-4】〔日射病などの突然の〕発作、まひ(英辞郎)
【1-名-5】《医》脳卒中

また、下は脳卒中の定義です。

脳卒中とは、脳の血管がトラブルを起こす病気です。脳卒中は大きく脳出血・脳梗塞・くも膜下出血に分類されます。脳梗塞は脳血管が「詰まる」のに対して、脳出血とくも膜下出血は脳血管が「破れる」という違いがあります。

次です。

(以下字幕)
You don’t need to have an outbreak to spread the virus.
ウイルスは存在します
(字幕終わり)

どうしてこの訳になるのか分かりません。「ウイルスは、そのウイルスによる症状が自分に出なくても広がる/他人に感染する」が直訳です。

次です。

(以下字幕)
The damage to your husband’s lungs is permanent.
肺の機能は回復しません。
The kidney damage is reversible, and with the right therapy, he should regain full neurological function.
腎臓もやられていますが 神経性の問題は治ります
Other than the fact that he’s not going to be running any marathons, he should be fine.
治療を続ければ 命は助かるでしょう

(字幕終わり)

The kidney damage is reversibleは、「腎臓のダメージは回復可能です/腎臓の機能は戻ります」です。最後の文は、「マラソンはできないでしょうが、それを除けば元に戻ります/戻るはずです」。

以上