ペンタゴン・ペーパーズ(イタリック体、botherなど)

トム・ハンクス主演の「ペンタゴン・ペーパーズ」からです。

1971年、国防省の最高機密文書である「ペンタゴン・ペーパーズ」をニューヨーク・タイムズ紙がスクープします。一方、ワシントン・ポスト紙も、報道規制に動く政府と戦うため、ニューヨーク・タイムズと協力し、真実を明らかにしようと決断します。有名なウォーターゲート事件の1年前の出来事です(ボブ・ウッドワードはワシントン・ポストにはまだいません)。

ウォーターゲート事件については、「大統領の陰謀」(All the President’s Men)という映画があります。ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインが出てきます。

まずは、イタリック体です。

(以下字幕)
ボブ・マクナマラと妙な会話をしたの
I just had an odd conversation with Bob McNamara,
明日 タイムズに大きな記事が出るそうよ
and I think The Times may have a big story tomorrow.
(字幕終わり)

それほど大事とは言えませんが、イタリック体の用法について少し書きます。

イタリック体は、強調、引用、船名、出版物名に使われます(詳しくは文法書などを当たってください)。したがって、上の台詞の「The Times」(The New York Timesの略称)は、「The Times」とイタリック体になるはずです。

ところが、映画の台詞の場合、そこにいない人(画面に映っていない人)の言葉はイタリック体で表す習慣があります。そこで、「The Times」をイタリック体にすると区別が付かなくなるため、通常の書体にしているのです。

次は、botherです。

(以下字幕)
The Nixon administration have charged that the final two parts of The Times’ series would result in “irreparable injury to the national defense.”
ニクソン政権は、タイムズの2回の記事は「国防に対する修復可能な損害である」と(報じました)
Hell, why bother fighting the communists?
まるで共産国家
(字幕終わり)

裁判所がニューヨークタイムズの記事(ベトナム戦争に関する機密文書に関する記事)を差し止めたのですが、そのことをテレビが報道している場面です。

Hell, why bother fighting the communists? は、「まるで共産国家」となっていますが、どうも違うような気がします。

この場合のbotherは「わざわざ(~)する」の意味ですから、「(そもそも)どうして、わざわざ共産主義者と戦うの?」が直訳で、「自分たちで、無用な戦争を始めておいて、いまさら何を言っているの」というニュアンスが込められているかもしれません。

または、「勝てない戦争なのに、どうして続けるのか?」という意味かもしれません。実際、ペンタゴン・ペーパーズ(ベトナム戦争に関する分析)によると、形勢不利という結果でした。

why bother to do/doing~は、「なぜ(わざわざ)~するのか?」→「~する必要はない」(反語)です。fightには他動詞があり、その場合、前置詞は不要です。上のfight the communistsは他動詞の例です。

次は、pauseです。

(以下字幕)
MEG: I think this memo’s from McNamara.
マクナマラのメモかも
Uh, “It is my belief that there should be three or four-week pause in bombing.”
”爆撃には3~4週間の間隔が必要”
(字幕終わり)

マクナマラが書いたメモを入手し、そこに書いてあった文章です。このpausesuspensionと同義で、「中断」の意味です。「間隔」であれは、intervalなどを使います。

次です。

(以下字幕)
BAGDIKIAN: Yeah, well, outside of landing the Hindenburg in a lightning storm,
ヒンデンブルクが雷雨の中 着陸した以外で—
that’s about the shittiest idea I’ve ever heard.
最もバカげた考えだ
(字幕終わり)

このoutside ofは、「~を除いて、~を別とすれば」(副詞句)です。ここはideaについて語っているのであり、厳密には「ヒンデンブルクが雷雨の中、着陸した」ではなく、「ヒンデンブルクを雷雨の中、着陸させる(という考え)」が正しい言い方かもしれません。

ヒンデンブルクは、天候が雨、雷、強風だったため、少し待機してから着陸しようとしました。ただし、その間に静電気が蓄積し、それが原因で炎上したのです。