「ポカ」は誰にでもあります。ただ、お金をもらって訳すのであれば、誤訳はあってはならないというのが原則でしょう。次が主な理由かもしれません。
- 納期が迫っていてうっかりした。
- 徹夜して頭がボーっとしていた。
- 辞書で調べるのを省いた。
- 翻訳者が正しく訳したのに、翻訳チェッカー(校閲者)やクライアントの編集担当者が誤って修正した。
実は、4が意外と多いのです。チェッカーは、文脈を追わず、一部だけを見て訳を変更することがよくあります。
以下、「ゴッサム」のシーズン3のディスク2(エピソード03)です。PowerDVDで日本語と英語の字幕を同時表示し、キャプチャーしました。
セリーナの友達アイヴィーが行方不明になりました。
セリーナ: I got a bad feeling. (字幕の訳:嫌な予感がするの)
ブルース: No offense, but… it’s not like you to care. (字幕の訳:冷たいようだけど、君の問題じゃない)
no offense(口語)は、英語で書けば、
do not be insulted
don’t get me wrong
do not be offended
です。
日本語では、「悪気はない/悪く思わないで/怒らないで/失礼な言い方だけど」という意味です。
もう少し正式な言い方としては、 with all due respectなどがあります。
したがって、No offense, but…は、「悪く取らないで/失礼な言い方だけど/きついことを言うようだけど」。 it’s not like you to care. は、「心配するなんて君らしくない(itは仮主語で、中身はto care)」が正しいと思われます。
一般に映画の翻訳はよくできており(作品によります)、それでも間違いがあります。一方、技術・実務翻訳は、量が多く納期も短いせいか(それと単価が安いこともあるのか)、誤訳や意味不明訳が多いようです。
特に最近は、自動翻訳(機械翻訳)が普及したため、自動翻訳にかけ、ザッと後編集をして納品するというケースもあるようです。これは困ったことです。