指示代名詞thisとthatの「時間的感覚」

thisとthatは「これ」と「あれ」であり、一般に感覚としては距離(空間)を表しています。これ以外に、「時間」を示すこともあります。以下、書籍からの引用です(江川泰一郎著「英文法解説」)。

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(2)先行する文の内容(の一部)を指すthisとthat

Many Japanese tourists prefer Paris to London. There are many reasons for this.

(日本の観光客はロンドンよりパリを選ぶ人が多いが,これには理由がいろいろある。)

Steve means well -that’s the best you can say for him.

(スティーブは悪気のない男だが、彼の取り柄はせいぜいそんなものさ。)

I tried to stop their quarrel, but that was not easy.

(けんかを止めようとしたが,容易ではなかった。)

《参考》このthatは次のような慣用句にも現れる。

My seatmate on the plane was a girl and a pretty one at that.

(飛行機で私と席が隣り合わせになったのは女の子で,しかもかわい子ちゃんたった)

 Americans have a strong sense of rights - that is (to say), the protection of their rights.     (権利意識・・・つまり自分の権利を守る意識が強い)

 

(3)次にくる文の内容を指すthis。この用法はthatにはない。

Listen to this: l don’t mind a joke, but this is going too far.

(よく聞きなさい。私は冗談は気にしないが,これは度がすぎている)

(What he said comes to this: he’s still in two minds about what to do.

(彼が言ったことは,要するにどうしたらいいかまだ迷っているということだ)

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ここで大事なのは、「この用法はthatにはない」という説明。つまり、thisは、過去と現在の事象(実際に存在する物事)と将来の事象(まだ発生していないか、または、今後発生する物事)を指すことができますが、thatにはこの用法はありません。

したがって、This is how we (will) do it.(これから説明する方法/手順で行う)はありますが、That is how we (will) do it.は使われません。なお、This is how we do it.より、Here is how we do it.のほうが圧倒的に多く見られます。

もう一つ、thatが過去の事実(状況)、thisが現在の事実(状況)を示す例。

Are you gambling again?

Is that what this is (about)?

それ(また、ギャンブルを行っていること)が、この(現在起こっている問題の)原因/理由?

以上