「ゴッサム」シーズン4の12話の場面です。PotPlayerで英語の日本語の字幕を同時表示し、キャプチャーしました。
(以下、英語と日本語の字幕)
What are you doing here?
ここで何を?
Well… it’s not too bad down here, really.
ここの暮らしも悪くはありません
I mean, you can rent a lovely space, for what?
Next to nothing, if you root around and you’re patient.
安く部屋も借りられる 我慢は必要ですが。
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ブルースの執事であるアルフレッドが家から追い出され、住まいを探している場面です。ここは、次の部分の構造が分かりにくいので、少し考えてみます。
I mean, you can rent a lovely space, for what?
Next to nothing, if you root around and you’re patient.
まず、for whatですが、このforは「…と引き換えに」の意味で、We sold our car for$1,000.(自動車を1000ドルで売った)(ジーニアス英和)などと使われます。次にwhatですが、その中身は、次の文のNext to nothing(ただも同然)です。つまり、you can rent a lovely space for next to nothingと書き換えられます。
if you root around and you’re patient.は、「(アパートを)探し回り、かつ辛抱して探し回れば」と解釈するのが妥当です。したがって、「アパートは、辛抱して探せばただ同然のところが見つかります」などがスッキリするかと思います。
次です。
(以下、英語と日本語の字幕)
I missed you.
待ってた
Is that so?
本当か?
Well, I haven’t missed you.
俺は戻りたくない
I haven’t missed begging you not to do something just to watch you go ahead and do it anyway.
俺が止めても お前は勝手に動くし—
Haven’t missed watching you bang Falcone’s daughter while she uses you to get rid of Penguin.
ファルコンの娘に利用され、ペンギンを追い回している
(英語と日本語の字幕終わり)
I haven’t missed begging you…の直訳は、「お前に対して何々するなと頼んでも、それを無視して進むから、俺は黙ってみているだけだが、そのことを寂しく思ったことはない」くらいです。同じく、Haven’t missed watching you…は、「お前はファルコンの娘と付き合っているが、実は、お前は、ペンギンを追い回したい娘に利用されており、それを俺は見ているが、そのことを寂しく思ったことはない」です。
ここで考えてみたいのは、missです。つまり、missed beggingとmissed watchingのように、目的語として動名詞が使われています。動詞の中には、不定詞(to do)ととるものと動名詞をとるものがあります。これがなかなか複雑で、とくに英文を書くときには迷います。
この用法については、「英文法解説改訂三版」(江川泰一郎著)に理論的で分かりやすい説明があります。以下、部分的に抜粋・引用します。
———————————–(引用開始)—————————————
動詞の目的語としての不定詞と動名詞
両者の使い分けを知るためには,次の3つの原則に注目する必要がある。
(1)原則の1
a)不定詞は時間的に未来を指向する動作・状態を示す。これに対して動名詞は b)時間的に中立ではあるが, c) 過去を指向することもできる。
(2)原則の 2
a)不定詞だけを目的語とする動詞は希望・要求・意図・決心など,動作の実現に対して積極的な含みを持っているが, b)回避・延期・休止など,動作の実現に対して消極的な含みを持つ動詞は動名詞だけを目的語とする。
a)I want to go for a walk. (私は散歩に行きたい)
b)Let’s avoid wasting time. (時間の浪費は避けよう)
(3)原則の 3 a)不定詞の意味上の主語は例外なく文の主語と一致するが,b)動名詞の意味上の主語は必ずしも文の主語とは一致しない。
a)She began to smoke. (彼女はタバコを吸い始めた)〈文の主語と一致〉
b)She began smoking. (同上) 〈同上〉
She doesn’t allow smoking in her room. 〈文の主語と一致しない〉
(=She doesn’t allow us to smoke in her room.)
(彼女は自分の部屋で[私たちが]タバコを吸うのを許しません。)
(中略)
「英文法解説改訂三版」(江川泰一郎著)では、上記の3原則をもとに動詞を次の5種類に分けています。
(中略)
(A)不定詞だけを目的語とする動詞
(B)動名詞だけを目的語とする動詞
admit, advise, allow, appreciate, avoid, consider, delay, deny, enjoy, escape, evade, fancy, finish, (cannot) help, imagine, mind, miss, permit, postpone, practice, prohibit, quit, recall. recollect, recommend, resist, risk, stop, suggest, understand; give up, leave off, put off
(C) 不定詞と動名詞の両方を目的語とする動詞 -(1)
※不定詞でも動名詞でも基本的意味が変わらない動詞
(D)不定詞と動名詞の両方を目的語とする動詞 -(2)
※不定詞を目的語とする場合は「これからすること」を表し,動名詞を目的語とする場合は「すでにしたこと」を表す動詞
(E)不定詞と動名詞の両方を目的語とする動詞 – (3)
※動名詞は能動態,不定詞は受動態で同じ意味を表す動詞
———————————–(引用終わり)—————————————
以上から、missは、動名詞を目的語としてとる動詞であることが分かります。上の例では、missは原則1(動名詞は b)時間的に中立ではあるが, c)過去を指向することもできる)が当てはまり、したがって動名詞が目的語として使われています。
詳しくは、「英文法解説改訂三版」をお読みください。3つの原則を基礎に、各種の動詞が目的語として動名詞または不定詞のどちらを取るかが分かりやすく解説されています。
以上